2015年12月27日日曜日

はてなきハイウェイ /(It's a) Long Lonely Highway




はてなきハイウェイ
/(It's a) Long Lonely Highway

長くて孤独な道のりさ
たった一人で旅していると
とっても辛い世の中さ
恋人がいないということは
たくさんの町を通り過ぎていく
名前のないほど小さな町を週ぎていく

*でも、このまま進んで行かなくちゃ
あてもなくあの道を
止まらずに、そのままで
愛する人さえいないけど
道に沿って、ひたすら進むのさ

長くて孤独な道のりさ
あの娘が一緒にいなければ
この道は涙でできた道
今でも流れ続けてる
心がズシリと重いんだ
全く情けない話だよ

*くり返し

枕の代わりには岩を
シダレヤナギの木の下で
寝床は冷たい草の上
飲み水は泥だらけ
だからってオレのこと
死んだほうがマシ、なんて言わないで

長くて孤独な道のりさ
道はどんどん長くなる
あの娘が探しに来なければ
頭がおかしくなりそうだ
もし、俺が新間にのったなら
あの娘のせいだと伝えてくれ

*くり返し

翻訳:川越由佳氏


涙のしずくのように憂いと潤いのある声。
エルヴィス・プレスリーならでは哀愁を帯びた声が、<はてなきハイウェイ>では、平静を保つように、淡々と転がっていく。

声とは対照的に突き抜けた明るさと乾いた空気を感じるパフォーマンスが、他人事のように客観的に見つめているようで印象的。

最初はつまらない曲だなと感じていました。それが聴くほどのスルメのように味が出てくるのが底力なんですかね。

エルヴィスは小細工しない淡々が好きですね。何気ないのが。

人生は予測不可能。山あり谷あり。まっすぐな道なんてない。なにがあるか分からない。
それは時代が変化し続けるものだし、その必然で人間だって変わる。
どう変わるかは人それぞれで、そこに普遍性を見出すことができない。それが悩みの種にもなる。

だから、この世界には2種類の人が出てくる
(可能性に背を向けて)「こんなもんでしょう」で生きていける者と、(可能性に自分を投げ込んで)「可能な限り最高をめざそう」という者と。
比率的には94%と3%かも知れない。残り3%は「こんなもんでしょう」さえ考えない。可能性に背を向ける人の方が利口なのか知れない。彼らにとって可能性に自分を投げ込むのは馬鹿に見えるかも知れない。それは価値観の問題だからそれぞれに任そう。

でも、このまま進んで行かなくちゃ
あてもなくあの道を
止まらずに、そのままで

エルヴィスだって、「こんなもんでしょう」でやっていた時期が長くあった。この曲はそんな時代の産物。周囲をヘトヘトにさせてもやり抜いた「ハウンドドッグ」の情熱から離れて遠く、しかし本能的に「可能な限り最高をめざそう」という魂があったから、つまらない曲だなと感じていても、まるまるそうはならない。エルヴィスの魂ってやつですね。

長くて孤独な道のりさ
たった一人で旅していると
とっても辛い世の中さ

誰だって受け身でいると、つまらない仕事にも手を染めることになる。エルヴィスは長い間、映画の契約に束縛され続け、意欲を失っていた。でも魂が死ななかったから、「はてなきハイウェイ」の先で、1968年に復活した。イースター(復活祭)のキリストにように蘇った。キリストは処刑後三日で復活したけど、エルヴィスは長かった。それでも死ななかった。

長くて孤独な道のりさ
道はどんどん長くなる
あの娘が探しに来なければ
頭がおかしくなりそうだ




このまま「はてなきハイウェイ」の先で夕陽と共に沈んでしまうのかも知れないと思った人は多いだろう。しかしこの曲とパフォーマンスに渡り鳥のように戻ってくる予感を感じた人も多いはずだ。まっすぐな道なんてない。だから重要なのはいつでも準備しておくことだ。朝は涙に落胆していても夕暮れには戦闘態勢に入るかもわからないのだから。だから最高をめざすエネルギーだけは失いたくない。