はてなきハイウェイ
/(It's a) Long Lonely Highway
はてなきハイウェイ(はてしなきハイウェイ) は1963年に録音されたが、エルヴィス・プレスリー主演映画のサントラとしてシングルリリースされたのは1965年だ。
最初は、たいしたことのない曲だと思ったものだ。
しかし、そうではない。この歌は聴けば聴くほど深くなっていく。
涙のしずくのように憂いと潤いのある声。
エルヴィス・プレスリーならでは哀愁を帯びた声が、
<はてなきハイウェイ>では、平静を保つように、淡々と転がっていく。
声とは対照的に突き抜けた明るさと乾いた空気を感じるパフォーマンスが、他人事のように客観的に見つめているようで印象的。
どこへ行こうが頭から離れない愛しい人の面影、仕草、言葉。
それらとどれだけ格闘しても、自分をねじ伏せる強い力。
起きて敗北、寝て敗北。枕は岩、口にする水は泥水となって襲いかかる。
深ければ深いほど、一途であればあるほど痛み。ただ敗北感だけが道連れ。
男は死んでしまうのか?
大丈夫、
♪ keep on going ♪
このまま進んで行かなくちゃ ♪
しかし、何のために?
ひとりの女と別れることは、別のひとりの女、もしかしたら、もっといい女に出会う可能性でもある。
物事の選択は、自分の選択でしかない。
♪ Tell her she's the one to blame ♪ あの娘のせいだと伝えてくれ ♪
そうは言っても、あの娘の選択ではない。生きようが死のうが、全部自分で引き受けて生きるだけだ。自分の選択だ。
♪ keep on going ♪ このまま進んで行かなくちゃ ♪
男は自分にムチを入れる。
♪ keep on going ♪
<はてなきハイウェイ>は男の詩だ。乾いている。
理屈が通じない女の世界。感情に弾き飛ばされた男は、全く情けない話だと自嘲しながら、キズつくことを選択した。
愛した女を守ってやりたいと思った男は万能の神の力を羨望する。
愛してしまった男の心はお守りの気持ちと同じ。
神の力にかけて、どれほど古びてもご利益がなくなったとは言えない。
失恋ごときで砕けていられない。ロックンロールだ!<はてなきハイウェイ>
踏まれるほどに守り抜きたい心もあった。
男はブルー・スエード・シューズをはいて旅に出た。
男は自分にムチを入れる。
♪ keep on going ♪
このまま進んで行かなくちゃ ♪
それが何になるのかと聞いてはいけない。
自分の良心にかけて、自分の良心を涙で磨くとき、男は自分になる。
keep on going
自由万歳!C級生活万歳!エルヴィスは最高だ!
<はてなきハイウェイ>男になる旅は終わらない。
長くて孤独な道のりさ
たった一人で旅していると
とっても辛い世の中さ
恋人がいないということは
たくさんの町を通り過ぎていく
名前のないほど小さな町を週ぎていく
*でも、このまま進んで行かなくちゃ
あてもなくあの道を
止まらずに、そのままで
愛する人さえいないけど
道に沿って、ひたすら進むのさ
長くて孤独な道のりさ
あの娘が一緒にいなければ
この道は涙でできた道
今でも流れ続けてる
心がズシリと重いんだ
全く情けない話だよ
*くり返し
枕の代わりには岩を
シダレヤナギの木の下で
寝床は冷たい草の上
飲み水は泥だらけ
だからってオレのこと
死んだほうがマシ、なんて言わないで
長くて孤独な道のりさ
道はどんどん長くなる
あの娘が探しに来なければ
頭がおかしくなりそうだ
もし、俺が新間にのったなら
あの娘のせいだと伝えてくれ
*くり返し
翻訳:川越由佳氏
<はてなきハイウェイ>は、映画「Tickle Me」(邦題「いかすぜ!この恋」)の挿入歌として使用された。合計9曲が歌われた。
<いかずぜ!この恋>と共に4曲が2枚のシングル・リリース。
残りは<がっちり行こうぜ><ナイト・ライダー>などを5曲を収録したEP盤でリリースされた。現在はテイク違いも含めて合計25曲を収録したアルバムも流通している。
1965年のエルヴィス・プレスリー主演映画「Tickle Me」(邦題「いかすぜ!この恋」)は。監督ノーマン・タウログ。共演はジュリー・アダムス。「ダッジ・シティ」などB級映画に出演していたキュートな女優。
時代は現代だが、ウェスタン・スタイルのロデオ男が印象的。恋とゴースト騒動のコメディ。